ストライキが注目された?
令和5年8月31日に、株式会社そごう・西武で組織される「そごう・西武労働組合」が、ストライキを実施しました。産業別労組UAゼンセンによると、百貨店業界としては、1962年の阪神百貨店以来61年ぶりのストライキとのことです。今回久しぶりに注目を集めたストライキですが、実際にストライキを実行したことにより、労働組合側はいつでもストライキを行える態勢にあるという状況を示し、改めて経営側に大きな圧力を与え、また、広く世間に対してストライキについて再認識させる出来事になったのではないでしょうか。
近年、日本においてストライキは、ほとんど行われていません。厚生労働省の「労働争議統計調査」によれば、「半日以上のストライキ(同盟罷業)」の件数は、戦後一貫して上昇していましたが、オイルショックのあった1974年の5197件をピークに、その後は減少傾向が続き、直近で調査結果の出ている令和3年は32件にとどまっています。
日本でストライキが少ない理由は
労働組合員がストライキを行う権利については、憲法や労働組合法によって保障されています。それでもなお、ストライキの数が減少している理由については、仮説があります。一つは、日本の労働組合の組織構造を要因とするもので、日本の労働組合は、大企業を中心に、企業ごとに正社員を主たる組合員として構成されており、正社員である組合員にとって、最も重要な関心ごとは「雇用の確保」です。これについて、1970年代以降の日本企業は、労働組合の「雇用の確保」という要求に応えることができたことから、大きな労働争議は避けられたという仮説です。
もう一つの仮説は、ストライキが憲法や労働組合法で認められた権利であっても、無条件にストライキの実行による、刑事責任や民事責任を免れるわけではないという点です。ストライキ中でも、会社は、操業を継続することは可能ですから、仮に正当性がないストライキであるとされた場合には、刑事責任が問われる可能性は少ないとしても、民事責任として、場合によっては多額の損害賠償責任を労働組合が負う可能性(リスク)は拭いきれないということから、躊躇をするのではという仮説です。
改めて「ストライキ」について考えてみるよい機会です。