退職所得は申告から外すのが原則
源泉徴収によって納税済みなので、退職所得の金額については、確定申告をする必要がありません。これは、現職当局者執筆の「確定申告の手引」において記されているところです。
それでも強いて退職所得申告をする場合があるとしたら、退職所得の金額を損益通算の対象に出来る場合、退職所得の金額から純損失や雑損失の繰越控除が出来る場合、退職所得の金額から所得控除が出来る場合、寄附金控除の限度額計算で有利計算に出来る場合など、有利選択の場合でしょう。
有利選択でない時に申告に含めると
逆に、「公的年金等に係る雑所得」以外の所得の合計所得金額が1000万円超の場合には、公的年金等控除額が一律10万円引下げられ、2000万円超の場合には、一律20万円引下げられます。配偶者控除・配偶者特別控除は、本人の合計所得金額が900万円から段階的に控除の金額が減少し、合計所得金額1000万円超では対象外となります。寡婦控除・ひとり親控除は、合計所得金額500万円以下との適用制限があります。基礎控除は合計所得金額2500万円以下に限定です。雑損控除と医療費控除の足切り額は合計所得金額が大きくなると増える場合があります。これらの場合に於いては、退職所得を申告に含めると、税負担を増やす結果になることがあります。
突然ですが・・・・
国税庁のホームページの確定申告コーナーにおける今年の確定申告書A「令和3年分用」には、「令和5年1月から申告書Aは廃止され、申告書Bに一本化されます」の文字が記載されていて、確定申告書A用の「手引き」の表紙にも、同じメッセージが記載されています。そして、確定申告書B用の「手引き」の「退職所得がある方」の項目の欄において突然、従来通りの文言の後に「退職所得のある方が確定申告書を提出する場合は、退職所得を含めて申告する必要があります」との追加挿入文を入れ、申告からの除外は許されないとしました。
税制改正無しのままでの解釈変更なのか、改正への予告なのか不明ですが、申告書AとBにおける2つの突然のメッセージは、表裏の関係にあるように思われます。
申告書Aの記載項目を埋めただけでは、税法の予定する税額計算が出来ません。申告書Bの退職所得の記載除外をOKとする場合も同じです。