ニュースに対する脊髄反応
KDDIが、いままでより低い高度の衛星を活用することで、これまでサービス提供が困難とされていた山間部や島しょ地域、災害対策においても高速通信を使えるサービスを開始すると発表しました。通信困難地域の方々にとってはうれしい話です。
しかしながら、このようなニュースに触れた時、“この課税関係ってどうなる?”と考えてしまうのが、税理士の悲しい性=職業病です。
衛星通信に対する課税(その1)
課税関係を考える場合も、B2B(企業間取引)、すなわち、KDDIと衛星通信サービス会社との間の利用料にどんな課税が適用されるのか、そして、こうしたサービスで儲かる会社に対して、日本国が税金を課税することができるのか、といったことに思いを馳せます。まずは、KDDIが支払う対価について考えてみます。
今回この衛星通信ブロードバンドインターネットサービスを提供するのは、アメリカの会社です。日本の会社であるKDDIが外国の会社に対価を支払うのですから、非居住者に対する源泉所得税の徴収義務があるのかどうかです。実際の契約内容が不明なので、あくまでも推測にすぎませんが、“衛星通信ブロードバンドインターネットサービス”であれば、所得税法の規定で、使用料として20.42%の源泉所得税が発生するのではないかと思われます。
ただし、日米租税条約を適用すれば免税(ゼロ)となるので、事前に所定の手続きをすれば源泉控除不要となります。
次に、消費税の問題です。こちらも契約内容次第ですが、「電気通信利用役務の提供」に該当すれば、アメリカ会社の役務提供は、日本の消費税が課されます。
衛星通信に対する課税(その2)
では、この衛星が日本国の上空で稼ぐ所得に対して、日本国の法人税は課税されないのでしょうか?
外国法人の場合、日本国内に事務所や事業所などの恒久的施設がなければ課税されません。国税庁法人番号公表サイトで調べた限りでは、日本国内に恒久的施設を持たないようですので、日本国の上空で稼いだ所得にも、日本国の法人税は課税されないものと考えられます。
芸能人の誰それが亡くなった→“相続税はいくら?”、親に豪邸をプレゼントした→“贈与税の問題は?”の話の方がよく耳にするニュースです。