雇用調整助成金の大幅増加
新型コロナウイルス感染拡大で休業を余儀なくされた企業の申請で、雇用調整助成金の給付が増えました。雇用調整助成金は企業が従業員に払う休業手当の費用を補助する制度で、仕事が減っても働く人を解雇せず、雇用を維持してもらうのが狙いです。
元々1人当たりの日額上限は8,300円でしたが、特例措置として今は売上げが大きく減少している企業には最大15,000円、助成率10分の10、原則としては13,500円、助成率最大10分の9となっています。
新型コロナの影響による支給決定額は20年3月~21年7月時点の累計で4兆円を超えています。リーマン・ショックの後も約6億5千億円で、今は6倍を超えています。失業率は抑えられた面もありますが、雇用保険料の財源はひっ迫してきています。
雇用保険料の財源
雇用保険は仕事を失った人のため、生活に困窮しないように給付するものと雇用安定・能力開発の2つに分かれています。企業からの保険料収入を財源にして、給付後の余剰は毎年積み立ています。ただこの度のコロナウイルス感染症で雇用安定事業の雇調金の給付が一気に拡大しました。
国の一般会計からの繰り入れ、失業者向け事業の方からの借り入れで賄っています。コロナ前に4兆5,000億円あった積立金が21年度には1,700億円になる見通しです。
厚労省が雇用保険料を上げる検討
積立金は16年以降保険料率を下げていましたが、余裕がなくなったため来年度は雇用保険料を上げる模様です。
失業者向け事業は労使で本来1.2%負担のところを0.6%で運用してきました。これをもし本来の料率に戻すと財源は1兆円規模で増加します。ただ被保険者が2倍の保険料徴収、企業も失業者向け部分の保険料が2倍となると負担は多大です。また、あまり意識したことはないと思いますが、雇用安定事業は事業主のみが負担していて、経団連等は国の一般会計からの拡充を求めています。
コロナ下で雇調金が雇用維持に一定の効果があったことは確かですが、休業手当の補助のため、人手不足企業などへの人材移動を阻む面があると言われています。
料率の見直しは秋にも具体案が審議されます